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中国ビジネス最新レポート(前編)

Published on October 16, 2014 - 01:43 PM/ 0 Comments

人件費の高騰著しい中国。

特に北京、上海、広州、深センなどの地域では、既存社員の昇給率が市場の人件費上昇率に追いつかず、新入社員の給与が既存スタッフの給与を上回ってしまうといった、日本のバブル期にも見られた現象が少なからず生じています。

既存社員のモチベーションや全体のバランス維持のためにも、ここ最近の給与動向について、ある程度把握しておく必要がありそうです。そこでまずご紹介したいのが、【図1】の最低賃金推移です。

ここでは上海市の最低賃金推移を示しておりますが、上海市に限らず中国全土において、最低賃金は軒並み上昇傾向にあります。上海市においては、2004年の635元に比べて2014年では1820元と、ここ10年で約3倍も上昇していることがわかります。また金融危機によって調整が無かった2009年を除き、2007年以降は前年比2桁のペースで最低賃金の上昇が進んでいます。

しかしながら、新卒採用での就職を希望する若者たちが、最低賃金でも良いから就職を望んでいるかといえば当然そんなことはありません。大卒就活生とその両親のリアルな願望を反映した面白い統計がありますのでご紹介します。

 

《2014年上海市大卒者父兄調査報告》

国家統計局上海調査総隊 2014年7月14日公表

本報告は、大卒就活生を子に持つ457名の上海市の父兄に実施したアンケート調査の結果です。

【図2】にて示されているのは、父兄が子女に対して希望する就職先と、就活生本人が希望する就職先との比較を表したものになります。

何よりもまず、外資企業を除く民間企業、即ち中国ローカルの企業に就職させたい父兄は全体のわずか4.4%である点が注目されます。また、公的機関、即ち公務員になってほしいと願う父兄は子女の割合より10%高く、外資企業に対しては子女の割合より10%以上低いことなどから、多くの父兄は、子女に対して安定した職に就いてほしいと考えているようです。

さらに、公務員出身、国営企業出身の父兄のうち、それぞれ62.5%、45.7%が子女にも同じ道を歩ませたいと回答したことに対して、民間企業出身の父兄においては、5.8%のみが同じく民間企業に就職してほしいと回答したとのことです。このとこからも、父兄の子女の就職先に対する安定志向がうかがえます。

 

次に、【図3】について解説します。こちらは、父兄が重視する子女の就職先の条件に対する回答です。

最も回答が多かった条件は「給与及び福利厚生」で、これに「将来性」が続く形になりました。この結果は、子女のアンケート結果とほぼ一致したとのことで、父兄、子女ともに、待遇面と将来性を重視していることが見て取れます。

本アンケート調査から導かれる子女の給与額に対する父兄の希望額は約4,900元/月とのことで、これは子女の希望給与額4,500元/月と大差無いとの説明が本報告に記載されています。また、大卒新入社員が実際に契約を締結した初任給の平均は約4,350元であり、「父兄の希望額は実際の給与額と近い水準にあり、比較的理性的だ」との評が書き加えられています。550元の差額が近いか遠いかは受け取り側の主観に委ねられますが、統計局としては、そういう書き方をしたようです。

 

次回後編では、全国35万人の大卒者向けアンケート調査結果から、新社会人の給与動向と消費志向などを更に掘り下げて解説致します。4,350元、手取りにして約3,600元という平均初任給は果たして妥当なのでしょうか?次回のブログ掲載をお楽しみに。

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執筆者:
李 彦成(リ・エンセイ)
HIKOYOグループの統括部長。遼寧省瀋陽市出身の中国朝鮮族。
3歳から22歳まで日本で過ごし、中央大学法学部を卒業後、2009年から上海に拠点を移す。
日中両国にバックグランドを持つ独自の観点から、中国ビジネスの客観的な分析を得意とする。

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